管業攻略ノート

委任・請負・売買と契約不適合をやさしく解説|受任者は無償でも善管注意・請負は完成前なら解除・不適合は知って1年以内に通知【管業攻略ノート】

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委任・請負・売買と契約不適合|管業攻略ノート

管理組合が工事を頼んだり、だれかに手続を任せたりするのは、どんな契約になるのですか?
けんた
けんた
まずは結論
手続を任せるのは委任、工事を頼むのは請負、物を買うのは売買です。委任の受任者は無償でも善管注意義務を負い、請負は完成する前なら注文者が損害を賠償して解除できます。売買で種類や品質が契約に合わないときは、知った時から1年以内に通知します。

「委任は無償でも善管注意、請負は完成前なら解除、不適合は知って1年以内に通知」と覚えるのがおすすめ!

この記事は、管理業務主任者(管業)とマンション管理士(マン管)の勉強を始めたばかりの人に向けて、民法の委任・請負・売買と契約不適合を、あおい先生と、不動産会社に入ったばかりのけんたさんの会話で、図と写真を見ながらやさしく解説します。

同じ内容は、約7分の動画でも紹介しています(目次のすぐ下)。

✍ この記事を書いた人:ごりへい(宅建士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・FP2級)
海外から宅建に一発合格、賃管・管業もダブル合格。不動産業の実務経験あり。 ▶ プロフィール

動画で学ぶ|委任・請負・売買と契約不適合(約7分)

あおい先生とけんたさんの会話で、3つの契約のちがい、委任の報酬と善管注意義務・解除、請負の報酬と完成前の解除、売買の契約不適合と通知の期間、手付による解除を確認できます。

▼ 読んで学びたい人は、このまま下へ

条文の番号、寄託とのちがい、売主が知っていたときの例外、過去問のひっかけまで、記事でくわしく解説しています。

 

3つの契約のちがい|任せる・完成させる・買う

この章の答え委任は事務の処理を任せる契約、請負は仕事を完成させる契約、売買は物を渡して代金を受け取る契約です。マンションでは、手続を任せる・工事を頼む・設備を買う場面で出てきます。
あおい先生
あおい先生
まず、3つの契約のちがいです。委任は、事務の処理を任せる契約、請負は、仕事を完成させる契約、売買は、物を渡して、代金を受け取る契約です。
あおい先生
あおい先生
たとえば、部屋を売る手続を、だれかに任せるのは委任です。外壁の補修工事を頼むのは請負、防災用の発電機を買うのは売買です。

3つの契約のちがい。委任は事務の処理を任せる、請負は仕事を完成させる、売買は物を渡して代金を受け取る

委任・請負・売買

委任は、本来は「法律行為」を任せる契約です(643条)。法律行為でない事務を任せる場合も、委任の規定がそのまま使われます(準委任・656条)。管理会社に管理事務を任せる管理委託契約も、準委任の性格をもつ契約とされ、標準管理委託契約書は5条で善管注意義務を明記しています(同コメント5条関係)。

契約 中身 根拠
委任 法律行為(事務)の処理を任せる 民法643条・656条
請負 仕事を完成させ、その結果に報酬を払う 632条
売買 財産権を移し、代金を払う 555条

※民法と、管理業務主任者・マンション管理士試験の公式の正答をもとに整理。

 

委任|無償でも善管注意・いつでも解除

この章の答え委任の受任者は、特約がなければ報酬を請求できませんが、有償でも無償でも善良な管理者の注意義務を負います。委任は各当事者がいつでも解除でき、相手に不利な時期の解除などは、やむを得ない事由がなければ損害を賠償します。

報酬は特約がなければなし

委任で任された人は、お金をもらえるのですか?
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
民法では、特約がなければ、受任者は報酬を請求できません。受任者とは、仕事を任された人のことです。もともと委任は、ただで引き受けるのが基本なんですね。

無償でも善管注意義務

あおい先生
あおい先生
でも、ただで引き受けても、注意の程度は下がりません。受任者は、有償でも無償でも、善良な管理者の注意、つまり、その立場の人に、ふつうに求められる注意をはらう義務があります。
あおい先生
あおい先生
無償なら、この義務を負わない、という言い方はひっかけです。なぜかというと、人の財産や手続を任されている以上、ただでも、いいかげんにはできないからです。

受任者の報酬と義務。報酬は特約がなければなし、注意は無償でも善管注意、報告は求められたらいつでも、復受任は許しかやむを得ない事由

善管注意義務は有償でも無償でも

物を預かる寄託は、ここがちがいます。報酬をもらわない受寄者は「自己の財産に対するのと同一の注意」で足ります(659条)。「委任も寄託も、有償か無償かで注意の程度が変わる」という選択肢は誤りで、変わるのは寄託だけです(管業 令和7 問2 c)。

報告と復受任

あおい先生
あおい先生
報告の義務もあります。委任者から求められたら、いつでも今の状況を報告し、終わったあとは、遅れずに、経過と結果を報告します。
あおい先生
あおい先生
また、受任者が、別の人にまた任せられるのは、委任者の許しを得たときか、やむを得ない事由があるときだけです。

いつでも解除・終わるとき

委任は、途中でやめられるのですか?
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
委任は、委任者も受任者も、いつでも解除できます。ただし、相手に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がなければ、相手の損害を賠償します。
あおい先生
あおい先生
不利な時期には解除できない、という言い方はひっかけです。解除はできて、損害を賠償する、という形なんですね。
あおい先生
あおい先生
また、委任は、委任者か受任者が死亡したときや、破産手続開始の決定を受けたときに終わります。受任者が後見開始の審判を受けたときも終わります。

委任の終わり。解除はいつでもできる、不利な時期は損害を賠償する、死亡・破産はどちらの側でも終わる、後見開始は受任者なら終わる

委任はいつでも解除できる

ルール 中身 根拠
報酬 特約がなければ請求できない 648条1項/管業 令和4 問1 b
注意義務 有償でも無償でも善管注意義務 644条/マン管 令和6 問16 a・管業 令和7 問1 c
報告 求められたらいつでも状況を報告、終了後は遅滞なく経過と結果 645条/管業 令和4 問1 a・マン管 令和6 問16 c
復受任 委任者の許諾かやむを得ない事由があるときだけ 644条の2第1項/管業 令和7 問2 b・マン管 令和6 問16 b
解除 各当事者がいつでも。不利な時期などは、やむを得ない事由がなければ損害賠償 651条/管業 令和4 問1 c・令和6 問3 a・マン管 令和6 問16 d
終わるとき 委任者・受任者の死亡・破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判 653条

※民法と、管理業務主任者・マンション管理士試験の公式の正答をもとに整理。

 

請負|報酬は引渡しと同時・完成前は注文者が解除

この章の答え請負の報酬は目的物の引渡しと同時に払います。仕事が完成する前なら、注文者はいつでも請負人の損害を賠償して解除できます。注文者が死亡しても請負は終わりません。

報酬は引渡しと同時

工事の請負では、代金はいつ払うのですか?
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
請負の報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に払います。工事に着手した時に、全額を払うのではありません。

外壁の補修工事の足場の写真。請負の報酬は目的物の引渡しと同時。着手した時に全額は誤り

外壁の補修工事

完成する前なら注文者が解除

あおい先生
あおい先生
仕事が完成する前なら、注文者は、いつでも、請負人の損害を賠償して、契約を解除できます。注文者とは、工事を頼んだ人、請負人とは、工事をする人です。
あおい先生
あおい先生
なぜかというと、いらなくなった工事を、最後まで続けても意味がないからです。ただし、完成した後は、この方法では解除できません。請負人の側から、この方法で解除することもできません。

請負のルール。完成前の解除は注文者が賠償して。完成後や請負人からはこの方法では解除できない

完成する前に、注文者から

あおい先生
あおい先生
途中で解除されても、すでにできた部分で、注文者が利益を受けるなら、請負人は、その利益の割合に応じて、報酬を請求できます。

注文者の破産と死亡

あおい先生
あおい先生
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人や破産管財人は、契約を解除できます。ただし、請負人からの解除は、仕事が完成するまでです。
あおい先生
あおい先生
委任とちがって、注文者が死亡しても、請負の契約は終わりません。直ちに終了する、という言い方は誤りです。

当事者が死亡したら。委任は契約が終わる、請負は注文者が死亡しても続く

請負は注文者が死亡しても続く

ルール 中身 根拠
報酬の時期 目的物の引渡しと同時(着手時に全額ではない) 633条/管業 令和4 問3 ア
完成前の解除 注文者がいつでも、請負人の損害を賠償して解除。完成後・請負人からは不可 641条/管業 令和2 問2 c・令和4 問3 イ・令和6 問3 b・令和7 問3 ア
割合に応じた報酬 完成前に解除されても、注文者が利益を受ける部分は、その割合で報酬 634条2号/管業 令和4 問3 エ・マン管 令和7 問16 a
注文者の破産 請負人・破産管財人が解除できる。請負人からは完成するまで 642条1項/管業 令和2 問2 b・マン管 令和7 問16 d
注文者の死亡 請負は終わらない(委任の653条のような規定がない) マン管 令和7 問16 b

※民法と、管理業務主任者・マンション管理士試験の公式の正答をもとに整理。

 

売買の契約不適合|追完→減額・知った時から1年以内に通知

この章の答え引き渡された物が種類・品質・数量で契約に合わないと、買主は追完、代金の減額、損害賠償、解除を求められます。種類や品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に売主へ通知します。

まず追完、直らなければ減額

買った部屋に、雨漏りがあったら、どうなるのですか?
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
引き渡された物が、種類や品質、数量で、契約の内容に合わないことを、契約不適合と言います。買主は、まず、修補などの、履行の追完を請求できます。追完とは、足りないところを直して、契約どおりにすることです。
あおい先生
あおい先生
追完の催告をしても、直してもらえないときは、不適合の程度に応じて、代金の減額を請求できます。直せるのに、いきなり減額を求めることは、原則としてできません。

損害賠償と解除の条件

あおい先生
あおい先生
損害賠償の請求や、契約の解除もできます。代金の減額は、売主に責任がなくても請求できますが、損害賠償は、売主に責任がないときはできません。解除は、不適合が軽いときはできません。

買主ができること。追完は修補など、代金の減額は催告しても直らないとき、損害賠償は売主に責任があるとき、解除は不適合が軽いときは不可

追完・減額・損害賠償・解除

知った時から1年以内に通知

あおい先生
あおい先生
そして期間です。種類や品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に、売主に通知します。1年以内に、損害の額まで示して請求する必要はなく、通知でよいのがポイントです。

通知の期間。対象は種類・品質の不適合、いつからは買主が知った時から、期間は1年以内、することは売主に通知。損害の額まで示す請求は不要

知った時から1年以内に通知

ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていたとき、または重大な過失で知らなかったときは、この1年の制限はありません(566条ただし書)。

あおい先生
あおい先生
請負でも同じで、注文者は、不適合を知った時から1年以内に、請負人に通知します。たとえば、浴室のリフォームのあとで水漏れが見つかったら、気づいてから1年以内に知らせます。

リフォームのあとの水漏れの写真。請負も知った時から1年以内に通知。たとえば浴室リフォームのあとの水漏れ

リフォームのあとの水漏れ

ルール 中身 根拠
追完 修補・代替物・不足分の引渡しを請求できる 562条1項/マン管 令和2 問15 a
代金の減額 催告しても追完がないとき、不適合の程度に応じて。売主の帰責事由はいらない 563条/管業 令和2 問2 a・マン管 令和2 問15 d
損害賠償 売主に帰責事由がないときはできない 564条・415条1項ただし書/マン管 令和2 問15 c
解除 不適合が軽微なときはできない 564条・541条ただし書
通知の期間 種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知(請求までは不要)。売主が悪意・重過失なら制限なし 566条/マン管 令和2 問15 b
請負 注文者も、知った時から1年以内に請負人へ通知 637条1項/管業 令和2 問2 d・令和4 問3 ウ

※民法と、管理業務主任者・マンション管理士試験の公式の正答をもとに整理。

 

手付による解除|相手が履行に着手するまで

この章の答え買主が手付を払っていれば、相手が履行に着手するまで、買主は手付を放棄し、売主は倍の額を現実に提供して解除できます。自分が着手していても相手が未着手なら解除でき、手付解除では損害賠償の請求はできません。

買主は放棄、売主は倍返し

売買の契約をやめたいときは、どうするのですか?
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
買主が手付を払っているときは、相手が履行に着手するまでなら、手付で解除できます。買主は手付を放棄し、売主は、手付の倍の額を、現実に提供します。
あおい先生
あおい先生
たとえば、手付が300万円なら、売主は600万円を用意して、買主に差し出します。買主が受け取らなくても、解除できます。

手付で解除するとき。手付300万円なら買主は300万円を放棄、売主は600万円を現実に提供。相手が履行に着手するまで

手付300万円なら、売主は600万円

あおい先生
あおい先生
自分が履行に着手していても、相手がまだ着手していなければ、手付で解除できます。また、手付で解除したときは、損害賠償の請求はできません。
ルール 中身 根拠
できる時期 相手方が履行に着手するまで(自分が着手していてもよい) 557条1項/マン管 令和5 問14 b
買主 手付を放棄する 557条1項
売主 手付の倍額を現実に提供する(買主が受け取らなくてもよい) 557条1項/マン管 令和5 問14 a
損害賠償 手付解除では請求できない 557条2項/マン管 令和5 問14 d

※民法と、管理業務主任者・マンション管理士試験の公式の正答をもとに整理。

 

試験に出る|ひっかけと過去問

この章の答え「無償なら善管注意義務はない」「不利な時期は解除できない」「請負の報酬は着手時に全額」「注文者が死亡したら請負は終わる」「引渡しから1年以内」「1年以内に損害額まで示して請求」がよく問われます。

よく出るひっかけ

ひっかけ 正しくは
無償の受任者は、善管注意義務を負わない 有償でも無償でも負う(マン管 令和6 問16 a)
委任も寄託も、有償か無償かで注意の程度が変わる 変わるのは寄託だけ(管業 令和7 問2 c)
相手に不利な時期には、委任を解除できない 解除はできる。損害を賠償する(651条2項)
請負の報酬は、工事に着手した時に全額払う 引渡しと同時(管業 令和4 問3 ア)
完成した後でも、注文者は損害を賠償して解除できる 完成する前だけ(641条)
注文者が死亡すると、請負は直ちに終わる 終わらない(マン管 令和7 問16 b)
不適合は、知った時から1年以内に損害額まで示して請求する 1年以内に通知すればよい(マン管 令和2 問15 b)
手付解除でも、損害賠償を請求できる できない(マン管 令和5 問14 d)

過去問の出題

令和2〜7年度で、問題文を読んで確かめると、委任・請負・売買の解除や契約不適合が主題の問題は、管業で8問、マン管で5問です。管業は令和7年度に問1〜3の3問続けて出ました。

年度 管業 マン管
令和2 問2 問15
令和3 — —
令和4 問1・3 —
令和5 問4 問14
令和6 問3 問13・16
令和7 問1・2・3 問16

※問題文と公式の正答から1問ずつ確かめたもの(令和2〜7年度)。心裡留保・詐欺などの意思表示の問題は、代理・意思表示の回で扱います。

 

まとめ|委任は無償でも善管注意、請負は完成前なら解除、不適合は知って1年以内に通知

まとめ
  1. 委任は任せる、請負は完成させる、売買は物と代金を交換する契約
  2. 委任の受任者は、報酬は特約がなければなし。有償でも無償でも善管注意義務
  3. 委任はいつでも解除できる。不利な時期などは、やむを得ない事由がなければ損害賠償
  4. 請負の報酬は引渡しと同時。完成する前なら、注文者が損害を賠償して解除。注文者が死亡しても終わらない
  5. 契約不適合は、追完→減額、損害賠償・解除。種類・品質は知った時から1年以内に通知
  6. 手付解除は相手が履行に着手するまで。買主は放棄、売主は倍額を現実に提供。損害賠償はなし
「委任は無償でも善管注意、請負は完成前なら解除、不適合は知って1年以内に通知」で、整理できました!
けんた
けんた
あおい先生
あおい先生
「無償なら」「着手時に全額」「引渡しから1年」の入れ替えが、よく出ます。表で確かめながら覚えましょう。

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出典・参考にした公式資料

  • 民法(e-Gov法令検索):541条・555条・557条・562条〜564条・566条・632条〜634条・637条・641条・642条・643条〜645条・648条・651条・653条・656条・659条
  • 管理業務主任者試験・マンション管理士試験の過去問と公式の正答(上の表の問題)


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