
修理代は必要費はすぐ、有益費は契約が終わったときに請求。家賃を上げない特約は有効、下げない特約はふつうの賃貸借では無効と、セットで覚えるのがおすすめ!
この記事は、賃管の勉強を始めたばかりの人に向けて、修繕と賃料の増減額のルールを、あおい先生と、不動産会社に入ったばかりのけんたさんの会話でやさしく解説します。
同じ内容は、約3分の動画でも紹介しています(目次のすぐ下)。
動画で学ぶ|修繕と賃料の増減額(約3分)
あおい先生とけんたさんの会話で、修繕義務・借りる人が直せるとき・必要費と有益費・家賃の増減額を確認できます。
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表と過去問の出題まで、記事でくわしく解説しています。
修繕はだれがする?大家さんの義務と例外
大家さんの修繕義務
| 場面 | ルール | 条文 |
|---|---|---|
| 使うのに必要な修繕 | 大家さんがする義務 | 民法606条1項 |
| 借りる人のせいで壊れた | 大家さんに修繕の義務はない | 606条1項ただし書 |
| 大家さんが建物を守る工事をする | 借りる人は断れない | 606条2項 |
| その工事で、借りた目的を果たせなくなる | 借りる人は契約を解除できる | 607条 |
※民法(e-Gov法令検索)。
試験では、「大家さんの修繕義務をなくし、借りる人に修繕させる特約」も有効とされています。また、借りる人の幼い子どもが排水管を詰まらせた場合に「大家さんに修繕義務がある」とする記述は×です(どちらも令和7年度問3の正答)。
借りる人が自分で直せるとき
民法607条の2では、①修繕が必要と知らせた(または大家さんが知った)のに、相当の期間内に直さないとき、②急迫の事情があるとき、の2つです。
令和5年度問23では、下水管が壊れて寝室に水もれし、大家さんが海外旅行中で連絡が取れない場面で「帰国を待たないと直せない」が×でした。
修理代と家賃|必要費・有益費と増減額の請求
必要費と有益費
| 項目 | 必要費 | 有益費 | 造作の買取り |
|---|---|---|---|
| どんなお金? | 大家さんが負担する修理代(例:古くなって壊れたトイレの修理) | 価値を高めるお金(例:くみ取り式トイレを水洗に) | 大家さんの同意を得て付けた畳・建具などの造作 |
| いつ請求? | すぐ | 契約が終わったとき | 期間の満了・解約の申入れで終わるとき |
| いくら? | 払った額 | 価値の増加が残っていれば、大家さんが選ぶ「払った額」か「増えた価値」 | 時価 |
| 根拠 | 民法608条1項 | 民法608条2項・196条2項 | 借地借家法33条 |
※例は令和5年度問23・令和3年度問25の記述から。費用の請求は、部屋を返してから1年以内にします(民法622条・600条)。
必要費を払ってもらうまで、借りる人は部屋の明け渡しを拒めます(留置権・民法295条、令和5年度問23)。ただし、その間の家賃に当たる額は負担するとされ、「負担する必要もない」は×です(令和3年度問25)。
造作の買取りの請求は、借地借家法37条(不利な特約を無効にする条文)の対象外なので、特約でなくせます。
部屋の一部が使えなくなったとき
| ケース | どうなる? | 条文 |
|---|---|---|
| 一部が使えない(借りる人のせいではない) | 使えない割合に応じて、家賃は当然に減る(請求はいらない) | 民法611条1項 |
| 残りの部分では、借りた目的を果たせない | 借りる人は契約を解除できる | 611条2項 |
| 全部が使えなくなった | 契約は終わる | 616条の2 |
家賃の増減額の請求
借地借家法32条1項は、「契約の条件にかかわらず」、将来に向かって増減を請求できると定めています。ただし「一定の期間は増額しない」特約には従います(32条1項ただし書)。
「家賃を下げない」特約があっても減額を請求できるのは、判例による考え方です。国土交通省「解釈・運用の考え方」も、サブリースで一定期間は減額できないと決めていても、減額の請求はできると説明しています。一方、定期建物賃貸借で家賃の改定の特約があるときは、32条は使われません(38条9項)。
| 話し合いがつかないとき | 決まるまでの支払い | 裁判で決まったあと |
|---|---|---|
| 大家さんが増額を請求 | 借りる人は、自分が相当と思う額を払えば足りる | 足りなかった分に年1割の利息を付けて払う |
| 借りる人が減額を請求 | 大家さんは、自分が相当と思う額を請求できる | 多く受け取った分に年1割の利息を付けて返す |
※借地借家法32条2項・3項(e-Gov法令検索)。
試験に出る|ひっかけと過去問7問
よく出るひっかけ
| ひっかけ | 正しくは |
|---|---|
| 有益費も、払ったらすぐ請求できる | 契約が終わったとき(民法608条2項) |
| 有益費は、借りる人が「払った額」か「増えた価値」を選ぶ | 選ぶのは大家さん(196条2項) |
| 部屋を返して1年半たっても、必要費を請求できる | 返してから1年以内(600条・622条) |
| 一部が壊れても、請求しないと家賃は減らない | 当然に減る(611条1項) |
| 一部が壊れて目的を果たせなくなったら、契約は当然に終わる | 解除できる(611条2項) |
| 「協議で改定する」特約があれば、増減額の請求はできない | 協議がまとまらなければ請求できる |
| 減額を請求したら、決まるまで借りる人は減らした額を払えば足りる | 大家さんは相当と思う額を請求できる(借地借家法32条3項) |
| 増減額の請求は、家賃が合わなくなった時にさかのぼる | 将来に向かって(32条1項) |
※令和3〜7年度の過去問(令和7 問29、令和5 問23、令和4 問23、令和3 問21・25)の公式の正答をもとに整理。
過去問の出題|直近5年で7問
賃管の過去問(令和3〜7年度)を1問ずつ見ると、修繕・費用・家賃の増減がテーマの問題は7問ありました。
| テーマ | 出た回数 | 出題(年度・問) |
|---|---|---|
| 家賃の増減額の請求(借地借家法32条) | 3問 | 令和7 問29/令和6 問17/令和3 問21 |
| 大家さんの修繕義務・借りる人の修繕 | 2問 | 令和7 問3/令和5 問23 |
| 必要費・有益費・造作の買取り | 2問 | 令和5 問23/令和3 問25 |
| 一部が使えないときの家賃 | 1問 | 令和4 問23 |
※問題文と公式の正答をもとにテーマごとに数えました(令和5 問23は2つのテーマにまたがるため、合計は7問より多くなります)。このほか、令和4 問28の選択肢にも「必要費は貸主が負担する」が出ています。
まとめ|修繕は大家さん、家賃は「上げない特約は有効・下げない特約は無効」
- 使うのに必要な修繕は大家さんの義務。借りる人のせいなら義務はない
- 知らせても直さないとき・急ぐときは、借りる人が自分で直せる
- 必要費はすぐ、有益費は契約が終わったときに請求する
- 一部が使えなくなったら、その分の家賃は当然に減る
- 家賃を上げない特約は有効、下げない特約はふつうの賃貸借では無効(判例)
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出典・参考にした公式資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 借地借家法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」
- 賃貸不動産経営管理士試験 令和3〜7年度の過去問と公式の正答
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