
途中で家賃に充てられるのは貸す人の側からだけ。大家さんが変われば引き継がれ、借りる人が変われば前の借主に返します。この3つから押さえるのがおすすめ!
この記事は、賃管の勉強を始めたばかりの人に向けて、敷金のルールを、あおい先生と、不動産会社に入ったばかりのけんたさんの会話でやさしく解説します。
同じ内容は、約3分の動画でも紹介しています(目次のすぐ下)。
動画で学ぶ|敷金のルール(約3分)
あおい先生とけんたさんの会話で、敷金が返ってくる時期・家賃に充てるときのルール・大家さんや借りる人が変わったときの扱いを確認できます。
▼ 読んで学びたい人は、このまま下へ
表と過去問の出題まで、記事でくわしく解説しています。
敷金ってなに?返ってくるのは明け渡しのあと
民法622条の2では、敷金を「いかなる名目によるかを問わず」、家賃などの支払いを担保するために、借りる人が貸す人に渡すお金としています。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(Q6)も、保証金という名目でも敷金になるとしています。
敷金を返すとき
| 返すとき | 条文 |
|---|---|
| 契約が終わり、かつ、部屋の返還(明け渡し)を受けたとき | 622条の2第1項1号 |
| 借りる人が、適法に借りる権利を譲り渡したとき | 622条の2第1項2号 |
※返すのは、受け取った敷金から、借りる人の未払いの家賃などを差し引いた残りです(民法622条の2第1項)。
条文でも、返すのは「部屋の返還を受けたとき」です。ガイドライン(Q9)も、敷金は明け渡しまでの損害金まで担保するので、明け渡したあとでなければ返還を請求できないとしています(判例)。
敷金から差し引けるもの・差し引けないもの
| お金 | 敷金から差し引ける? | 根拠 |
|---|---|---|
| 未払いの家賃 | ○ | 622条の2第1項 |
| 契約が終わってから、明け渡しが遅れた間の損害金 | ○ | ガイドラインQ9・令和5年度問20 |
| 借りる人の故意・不注意などでできた傷の修理代 | ○ | 621条・ガイドラインQ6 |
| ふつうに住んでできた傷み(通常損耗)・年数による傷み(経年変化) | × | 621条 |
※差し引くのに、特別な意思表示はいりません。「債務を特定して充てると伝えない限り、全額を返さなければならない」は誤りです(令和5年度問20)。
契約で「退去時に一定額を差し引く」と決める敷引特約もあります。敷引の額が高すぎる場合は、特段の事情がない限り消費者契約法10条で無効になりますが、高すぎなければ有効とされています(判例・最高裁平成23年3月24日判決。ガイドラインに収録)。
敷金の返還でもめたときは、60万円以下のお金の請求なら、簡易裁判所の少額訴訟を使えます(民事訴訟法368条)。
途中で家賃に充てる・人が変わったとき
途中で敷金を家賃に充てる(充当)
| だれから | 途中で家賃に充てる | 条文 |
|---|---|---|
| 貸す人 | できる(明け渡しの前でも、判決がなくても) | 622条の2第2項前段 |
| 借りる人 | 請求できない | 622条の2第2項後段 |
※令和7年度問28:借りる人が「敷金を充てて」と求めても、貸す人は滞納家賃の全額と遅延利息を請求できる(正しい記述)。令和5年度問19:貸す人が充てた分は、借りる人の承諾がなくても家賃の支払い義務がなくなる(正しい記述)。
大家さんや借りる人が変わったとき
| だれが変わる | 敷金 | 根拠 |
|---|---|---|
| 大家さん(建物が売られた) | 新しい大家さんに引き継がれる | 605条の2第1項・4項、605条の3 |
| 借りる人(借りる権利を適法に譲った) | 引き継がれない。前の借主に返す | 622条の2第1項2号 |
| 競売で持ち主が変わった | 引渡しのあとに登記された抵当権なら新しい持ち主、引渡しより前なら前の大家さんが返す | ガイドラインQ11 |
※大家さんの交代で引き継がれるのは、借りる人が対抗要件(建物の引渡しなど)を備えている場合です(民法605条の2第1項、借地借家法31条)。
大家さんの立場は、新しい持ち主との合意だけで、借りる人の承諾なしに移すこともできます。この場合も敷金は引き継がれます(605条の3)。ただし、新しい大家さんが、大家さんになったことを借りる人に主張するには、所有権移転の登記が必要です(605条の2第3項)。
試験に出る|ひっかけと過去問11問
よく出るひっかけ
| ひっかけ | 正しくは |
|---|---|
| 敷金の返還と部屋の明け渡しは同時 | 明け渡しが先で、返還が後(622条の2第1項1号・判例) |
| 借りる人は「敷金を滞納分に充てて」と請求できる | 請求できない(622条の2第2項・令和7年度問28) |
| 貸す人が敷金を充てられるのは、明け渡しのあとだけ | 契約の途中でも充てられる(令和3年度問20) |
| 判決で家賃の額が決まらないと、敷金を充てられない | 判決はいらない(令和3年度問22) |
| 明け渡しが遅れた間の損害金は、敷金から差し引けない | 差し引ける(令和5年度問20) |
| 敷金は、契約と同時か、その前に預けなければならない | 合意があれば、契約のあとに預けてもよい(令和5年度問20・令和3年度問20) |
| 大家さんが変わっても、敷金は前の大家さんに請求する | 新しい大家さんに引き継がれる(605条の2第4項・令和3年度問20) |
| 借りる権利を譲ると、敷金も新しい借主に引き継がれる | 前の借主に返す(622条の2第1項2号・令和5年度問26) |
| 家賃が減額されたら、敷金も同じ割合で減り、差額を返す | 家賃の減額で、敷金が当然に減るわけではない(令和6年度問17) |
※年度・問番号を書いたものは、公式の正答で確かめています。
過去問の出題|直近5年で11問
賃管の過去問(令和3〜7年度)を1問ずつ読むと、民法の敷金のルールが出てくる問題は11問ありました。1問まるごとの問題は2問で、ほかは賃料・滞納・抵当権などの選択肢として出ています。
| テーマ | 問題数 | 出題(年度・問) |
|---|---|---|
| 敷金のきほん(1問まるごと) | 2問 | 令和5 問20/令和3 問20 |
| 途中で家賃に充てる(充当) | 3問 | 令和7 問28/令和5 問19/令和3 問22 |
| 借りる人の交代と敷金 | 1問 | 令和5 問26 |
| そのほか(家賃の減額・破産・競売・相続・少額訴訟) | 5問 | 令和7 問7/令和6 問17・23/令和5 問11/令和4 問25 |
※問題文と選択肢を1問ずつ読み、民法の敷金のルール(返還・充当・承継など)にふれる問題を数えたものです。管理業者の金銭の分別管理、サブリースの標準契約書・重要事項説明に出てくる「敷金」は数えていません。
まとめ|敷金は「明け渡しが先・充てるのは貸す人から」
- 敷金は、家賃などの支払いを担保するために預けるお金。名前が保証金でも同じ
- 明け渡しが先で、返還が後。返すのは未払い分を差し引いた残り
- 途中で家賃に充てられるのは貸す人の側からだけ。借りる人からは請求できない
- 大家さんが変わったら新しい大家さんに引き継がれ、借りる人が変わったら前の借主に返す
- 賃管では直近5年で11問。まるごとの問題は2問で、ほかは選択肢の1つとして出る
あわせて読みたい関連論点
出典・参考にした公式資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 借地借家法(e-Gov法令検索)
- 民事訴訟法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
- 賃貸不動産経営管理士試験 令和3〜7年度の過去問と公式の正答
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