
相続人がいなければ、一緒に暮らしていたパートナーが引き継ぎます。「相続人がいるか・いないか」で分けて覚えるのがおすすめ!
この記事は、賃管の勉強を始めたばかりの人に向けて、借りる人が亡くなったときのルールを、あおい先生と、不動産会社に入ったばかりのけんたさんの会話でやさしく解説します。
同じ内容は、約3分の動画でも紹介しています(目次のすぐ下)。
動画で学ぶ|賃借人の死亡・相続(約3分)
あおい先生とけんたさんの会話で、契約が相続されること・家賃の全額請求・一緒に暮らしていたパートナーの引き継ぎを確認できます。
▼ 読んで学びたい人は、このまま下へ
表と過去問の出題まで、記事でくわしく解説しています。
借りる人が亡くなっても、契約は終わらない
民法896条では、相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます。部屋を借りる権利(賃借権)も、家賃を払う義務も、まとめて相続人に移ります。
賃貸借と使用貸借のちがい
| くらべる点 | 賃貸借 | 使用貸借 |
|---|---|---|
| お金 | 家賃を払う(601条) | ただで借りる(593条) |
| 借りる人が亡くなると | 終わらない。相続人が引き継ぐ(896条) | 終わる(597条3項) |
| 「亡くなると終わる」ルールは賃貸借にも? | ― | 使われない。597条のうち賃貸借に準用されるのは1項(期間の満了で終わる)だけ(622条) |
※民法593条・597条・601条・622条・896条(e-Gov法令検索)。
貸す人(大家さん)が亡くなったとき
貸す人が亡くなった場合も、契約は終わりません。大家さんの立場も、896条によって相続人に引き継がれます。
大家さんの相続人が何人もいる場合、亡くなってから遺産分割までの家賃は、各相続人が相続分に応じて受け取るとされています(判例)。「遺産分割までの家賃は相続財産になる」という選択肢は、適切ではないとされました(令和4年度問20)。
だれが引き継ぐ?相続人がいるとき・いないとき
家賃を払う義務は、性質上分けられない不可分債務とされています。これは条文ではなく、判例による考え方です。
不可分債務には、連帯債務のルールが当てはまります(民法430条)。そのため、大家さんは相続人の1人に全部を請求することも、全員に請求することもできます(436条)。
相続人が何人もいるときのルール
| 場面 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 家賃の請求 | 相続人の1人に全額を請求できる | 判例(不可分債務)・民法430条・436条 |
| 借りる権利 | 相続人みんなで引き継ぐ(共有) | 民法898条 |
| 契約の解除 | 相続人全員に対してしなければならない | 民法544条1項 |
| 個人の保証人 | 借りる人が亡くなった時点で、保証する元本が確定する | 民法465条の4第1項3号 |
※令和4年度問27では「借りる人が亡くなると、連帯保証契約の元本は確定する」が正しい記述とされています(公式の正答)。
元本が確定すると、それより後に生じる家賃は、保証の対象に入らなくなります。
借地借家法36条のポイント
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| どんな建物 | 住まい(居住の用)の建物の賃貸借 |
| 亡くなった人 | 相続人がいないまま亡くなった |
| 引き継ぐ人 | 婚姻や養子縁組の届出はないが、事実上の夫婦・養親子と同じ関係にあった同居者 |
| 引き継がない方法 | 相続人なしに亡くなったことを知ってから1か月以内に、大家さんに反対の意思を伝える |
| 引き継ぐもの | 借りる人の権利義務。賃貸借から生じた債権・債務も引き継ぐ(36条2項) |
※借地借家法36条(e-Gov法令検索)。令和7年度問7でも、この内容が正しい記述とされています。
これは、同居者が相続人の借りる権利を援用して住み続けられる、という判例の考え方です。36条は「相続人がいない場合」のルールなので、相続人がいる場合とは分けて覚えましょう。
相続人も同居者もいないとき
相続人がいなくても、借りる権利が当然に消えるわけではありません。相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人になります(民法951条)。そして、利害関係人か検察官の請求で、家庭裁判所が相続財産の清算人を選びます(952条)。
また、借りる人が亡くなったあとの契約の解除や、部屋に残った物の扱いに備えて、法務省と国土交通省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(令和3年6月)を公表しています。賃管でも出題されています(令和7年度問45・令和4年度問45)。
試験に出る|ひっかけと過去問11問
よく出るひっかけ
| ひっかけ | 正しくは |
|---|---|
| 借りる人が亡くなると、賃貸借は終わる | 終わらない。相続人が引き継ぐ(896条) |
| 遺言がなければ、大家さんは相続人に対して契約を解除できる | 解除できない。遺言がなくても相続される(令和6年度問25) |
| 相続人が何人もいると、家賃は相続分ずつしか請求できない | 1人に全額を請求できる(判例・430条) |
| 相続人がいなければ、内縁のパートナーは出ていくしかない | 事実上の夫婦の同居者は、36条で権利義務を引き継ぐ(令和7年度問7) |
| 相続人がいないと、借りる権利は当然に消える | 当然には消えない。相続財産の清算人が手続きをする(951条・952条) |
| 期間2年の普通の建物賃貸借に「借りる人が亡くなったら終わる」と特約すれば、その時点で終わる | 借りる人が亡くなっても、契約は終わらないとされる(令和5年度問21) |
| 相続人がいると、一緒に暮らしていた内縁のパートナーは明渡しを拒めない | 相続人の借りる権利を援用して、明渡しを拒める(判例・令和3年度問24) |
| 公営住宅も、相続人が当然に使う権利を引き継ぐ | 公営住宅の使用権は、当然には相続されない(判例・令和7年度問7・令和3年度問24) |
| 大家さんが亡くなると、遺産分割までの家賃は相続財産になる | 各相続人が相続分に応じて受け取る(判例・令和4年度問20) |
※年度・問番号を書いたものは、公式の正答で確かめています。判例にもとづくものは「判例」と書いています。
過去問の出題|直近5年で11問
賃管の過去問(令和3〜7年度)を1問ずつ読むと、借りる人・貸す人の死亡や相続が出てくる問題は11問ありました。1問まるごとの問題は2問で、ほかは保証や抵当権などの選択肢の1つとして出ています。
| テーマ | 問題数 | 出題(年度・問) |
|---|---|---|
| 賃貸借の当事者の死亡(1問まるごと) | 2問 | 令和7 問7/令和3 問24 |
| ほかの問題の選択肢の1つ(賃貸借・定期建物賃貸借・抵当権・保証) | 6問 | 令和6 問25/令和5 問21/令和4 問20・24・25・27 |
| 残置物モデル契約条項・終身建物賃貸借 | 3問 | 令和7 問45/令和4 問26・45 |
※問題文と選択肢を1問ずつ読み、賃貸借の当事者の死亡・相続にふれる問題を数えたものです。相続税、管理業者の死亡の届出、サブリースの重要事項説明は数えていません。
まとめ|賃借人の死亡は「相続人がいるか」で整理する
- 借りる人が亡くなっても、賃貸借は終わらず相続される。ただで借りる使用貸借は終わる
- 相続人が何人いても、大家さんは1人に家賃の全額を請求できる(判例)
- 相続人がいなければ、事実上の夫婦・養親子の同居者が引き継ぐ。1か月以内に反対すれば引き継がない
- 相続人がいるときは、同居者は相続人の権利を援用して住み続けられる(判例)
- 賃管では直近5年で11問。まるごとの問題は2問で、ほかは選択肢の1つとして出る
あわせて読みたい関連論点
出典・参考にした公式資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 借地借家法(e-Gov法令検索)
- 賃貸不動産経営管理士試験 令和3〜7年度の過去問と公式の正答
こちらもCHECK
-
-
賃貸不動産経営管理士|おすすめ通信講座3選を徹底比較【2026年最新版】
続きを見る
